ちょっと立ち話 | 親バカ・・無限大 | 2002/3


「完璧!ありがとう。」娘はそういって、くるりと回った。今日は中学の卒業式。
昨夜、セーラー服のスカートのプリーツのアイロン掛けに四苦八苦しているのをみかねて、
私が最後の仕上げをした。
今日は背中まである長い髪を、少し高めのポニーテールにして空色のゴムで止めている。
「一足お先に・・行ってきます〜」下した前髪を鏡でちょっと見直して出かけた。
それから、2時間後、私は父兄席で雑談しながら、子供たちの入場を待った。
それぞれが、それぞれの表情で入ってくる。みんな大きくなったなあ
いまどきの子らしく、金髪の子も見かけたけれど、その子の小学生だった頃の面影がそのまま残っていて、 「やんちゃしてても、まだこどもじゃん。」と・・・可愛らしかった。
遠くからみる私の娘はとても綺麗だった。セーラー服もお手本のようにつつましやかだったし、
つやつやの黒い髪もさらさらしていた。
髪に止めた空色のゴムを遠くから見つけ出して、私はそればかりを見ていた。
いろいろなことがあった・・・・
中学2年、部活のまとまりが悪くなって、孤立無縁の辛い立場になったとき、
顧問の先生に助け船を出してもらおうとした。それなのに、
「彼女達は貴方に甘えているんだから、受けとめて上げなさい」と言われた事があった。
「先生!私だって14歳なんです。」そういって涙をこらえたことを、私は知っている。
あれもこれも、全部あの子のエネルギーになったのだろうか。
粛々と式が終わり、父兄ともども、それぞれの教室に戻った。
「全員が一言いいましょう。なんでもいいですよ。」
順番に「楽しいクラスでした。」「みんな忘れないでね。」「これからも頑張ろうね」
娘の番になって、私もちょっと緊張していると、
一人だけ「私は母に伝えます」、と言って くるりと後ろを振り返った。
「お母さん、有り難う」 聞いたとたん、涙が止まらなくなって、
彼女が何を言ったのか、最後まで聞いていない。
「今日お母さん泣いた?」大声で帰って来た。『あんなこというから、あたり前でしょう。』
出来立てのサンドイッチの耳がついたままを、がぶりかぶりついて、
セーラー服のまま、また出かけて行った。
『着替えないの?』
「もちろん!だって、これ着るの今日で最後だもん。これでプリクラ撮るの!」
『えっ?テレクラ?』
「ばっかじゃない?プ・リ・ク・ラ プリクラ!」

さて、お赤飯を炊きましょう。