ちょっと立ち話 | 犬の介護 | 2001/5


ポインターとビーグルのハーフ。年齢11歳、♂。人間でいうと70歳ちょっと。
名前は哲朗こと、”テツ”。 ぼ〜っとした犬で。お人よしで。
夕方「散歩に連れていってくれよ〜」と吠えるくらいで、
猟犬だから、決して人間にむかって吠えることはない。
怪しげな人が来たらちょっとくらい吠えてよ。番犬にもならない。
そんなうちの犬が今年の2月中旬のこと
ある日突然、本当に突然 下半身不髄になってしまった。
獣医さんの説明では、前兆があったようだが・・・・
前足だけで、体を引くように動く。
下半身不髄だからもちろん排便、排尿、垂れ流しで手がかかる。
あまりに寒い時期だったので、家に入れ居間に寝かせたから
く〜んと泣く毎に夜も幾度となく起きなければいけなかった。
人間と同じで、2時間以上おなじ体位をしていると、褥瘡(床ずれ)になる。
できるかぎり抱っこしてやったが、いかんせん両足とも穴があき、
化膿してパンパンに腫れ 膿も出てきた。食欲もない。息つかいも荒い。
吠えもしないで、じっとうずくまっていた。
私もやりきれなくて、16キロもある体を抱っこするごとに涙が出た。
一日おきに通院したが、レーザー治療や、ステロイド、抗生剤投与
そのつど5〜8千円もかかる。医療費もバカにならない。
私も疲れた・・・・”テツ”を楽にしてやろうよ・・・みんなで泣いた。
そんなとき、知り合いのお嬢さんが私にそっと教えてくれた。
『犬って、人間の気持ちをわかろうとするから、泣いていると、
僕の御主人 どうして泣いているのかなあ。とかえって心配させる。
もし安楽死をさせてやるとしても、笑って送ってやらないと・・・・・』
獣医さんからも、「今日明日食べないようだったら、次を考えましょうか。」
私はすっかり衰弱してしまった”テツ”に正直に話した。
たれている両耳を上に持ち上げた。
「テツ!しっかり聞きなさいよ。医療費はかかるし、私も疲れた。
天国に行くか元気になるか、二つに一つ。分かる?
残念なのは、天国に行くのはね、テツ。自分では決められないで、
私が決めるんだよ。空に帰れって。なにくそ根性だして、元気になってよ。
ここでしゃんとしないと!もう時間がないの。」
翌日、テツは食べた。翌々日、もっと食べた。
さらにその翌日は、起きあがろうとした。足の腫れもだんだんに退いた。
それからは、ぐんぐんと調子をとりもどした。
散歩にも連れて出るようにしたが、もちろん後ろ足は動かないので、
両後足を前足に連動させるように、中腰になって私が動かした。
3ヶ月経った5月。以前と同じとまではいかないが、走るようにもなった。
獣医さんからも奇跡的と言える回復だといわれた。あの話しをちゃんと聞いていたのだろうか。
だめだろうと思っても、正面向って話してやってよかった。たぶん人間も同じことだろうと思う。
あきらめないことは、大切なことだと実感する。

テツ の写真(2001/2/11)発病直後