ちょっと立ち話 | 気働き | 2000/12

「気働き」(きばたらき) 亡くなってしまった母が、よく口にしていた言葉です。
小学生のころから、そして結婚してからも、
何かにつけて、私と姉は、この言葉でしかられた。
辞書には、 「気働き:頭の回転が速く、事に応じて、すぐ対処できること」とあるが
起こり得るすべてを想像して、それぞれに対処できるよう準備をし、
そして体を動かして、働きなさい。ということなのだそうな。
同じような意味のことばに、気を回すというのがあるが、
ちょっと、微妙にちがう。
「きちんと気働きをして・・・・」
と言う説教になると、「はいはい、気働き、気働き♪〜」といいながら、
タイミングよく、逃げ去った。
お茶を差し出した時の置き場所が、書き物の横でいけないとか、
すれちがう時ちょっと肩を横にしなかったとか
目線が上向きだったっとか、下向きだったとか、・・
本当にうるさかった!
私に関しては、母も躾に失敗したようで、
母と同じような歳になっても、なにも身についていないことは情けない。
残念なことに、私も娘の躾には、失敗したかも、し・れ・な・い

さて

私のお気に入りの野良猫がいる。まあ〜不細工・・というので、
「まぶー」と言う命名となったのだが、
まぶーはこの界隈を取り仕切るボス猫である。
なにかの本に書いてあったが、ボス猫の条件は、鋭い眼光でもなく、
餌情報の多さでもなく、顔の大きさらしい。まったくもって、このまぶー、
大きく、平べったい顔はボス猫の条件にぴったりなのであるが、
人間様からみると、なんとも間抜けな顔をしている。
その、野良猫まぶー。毎朝、ガラス越しに私を、じぃーっと見つめる。
餌がほしいとか、寒いよ―とか、哀れな顔などとは縁遠く、ぎゃくに、
「おい!餌!」と、えらく威張っている。
一回は抱っこされるのが渡世の仁義。
今日も、餌をさしだして、8キロもあろうか、巨体を、抱っこした。
いつものように、すぐに放してやればよかったのだが、
今日はちょっと油断して、
うちの飼い猫を抱っこするように、膝の上に抱きかかえた。
私もよくよく彼の気持ちを考えてやればよかったのだが、
彼としても、怖かったのだろう、ギャッとないて、私の手首を噛んで、逃げ去った。
おかげで、私の手首には、包帯が巻かれ、
化膿止めの抗生剤を服用するはめになったのだが、
家族のみんなから気働きを受け、いたわられ・・・・と思っていたのに、
「なに馬鹿やってるの!野良猫は噛むに決まってるでしょう!」と
予想外に”ののしられ”手首がいっそうズキンと痛んだ。

私を戒めることが、気働きでしょうか。
今、まさに、手首は痛いのでございますよ。