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ちょっと立ち話 | 愛すべき小さきもの | 2006/9


クリーニングに出すつもりのカッターシャツやら、ズボンやら、
山盛りにしてあったものを持ち上げると、ちいさなちいさなヤモリが出てきた。
しっぽも入れて、全長3cmくらい。
今までの私なら、ぎゃお〜〜だ・れ・か って叫ぶのに、
今日は可愛いって思ってしまった。

ゴキブリや蜘蛛なんて平気なのに、私は大の爬虫類嫌い。
TVの画面に出てくるヘビやトカゲもまったくだめ。
もう何十年も前からのトラウマのようなものがあってね。
かくかくしかじか
私がまだ中学生だった頃、私は末は博士か大臣かっていわれるくらい優秀な子だったの。
夏の終わりのある日、その日も机に向かって、たぶん勉強していたんだと思う。
机の下に置きっぱなしにしていたスリッパの中に ホワって感じのものがあって、
無意識のうちに足の裏で転がして遊んでしまったのです。
足を前後にゆらゆら動かして、ホワってしてたものがよれていく感じを楽しんでいたというか・・・
ちょっと足を止めたとたん、そのホワってしたものは、動いて逃げ去ったのです。
逃げ去る?
恐怖の中で私が目撃したもの、逃げ去ったものの正体は、”ヤモリ”
そのときの恐怖、嫌悪感は何十年も消え去ることはなく、
恐怖で、私の優秀であった脳みそは溶け出してしまい、今ではこのありさま。
溶け出してしまった脳みそはどこに流れ出したのか、いや、体の脳以外のところで、
役立たずに固まってしまっているのか?

その日の夕方、そのちいさなヤモリを今度は洗面所で見かけた。
このままではミイラになって死にそうだったので、外に出してやろうと思って
紙箱に入れようとしたら、逃げて引き戸の下に入り込んでしまった。
引き戸を上に持ち上げて出そうとしたけれど、出てくる前に私の力が尽きて、
重い引き戸を下ろしてしまったのです。
あっ・・・・ヤモリは戸の下敷きになってつぶれた。助けようとしただけなのに・・・
夫の帰宅を待って、つぶれたヤモリを取り出してもらおうとしたけれど、
見つけられなかった。
「逃げたんじゃないのか?」
『ううん。今年の大掃除の頃に、つぶれてミイラになって出てくるんだわ』

1週間以上もたって、今度は台所の流しにひょろひょろ出てきた
まあ〜〜元気でいたんだわ
生ごみと一緒にごみ袋に入れてしまいそうになったので、
今度は夫につまんで外に出してもらった。 めでたし
『こんなに良いことをしたんだから、神様は私にご褒美をくれると思うわ』
「いや、湖に落としたのは鉄の斧なのに、金の斧だというくらいせこいね」
きゃーっていう奇声が似合わなくなってやっと、私も成長したものだと思う。
格言”生きとしいける小さきもの、すべて愛すべきものなり”