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ちょっと立ち話 | 擦れ合う | 2005/10


若い方の結婚パーティーから帰った夫が、新郎新婦のポートレートを兼ねた小さなパンフを見せてくれた。
新郎から○○ちゃんへ:「結婚してくれて、ありがとう。って言って欲しい」
新婦から△△君へ:「私と結婚できて良かったね。大事にしてね」
と記してあった。結婚までの経緯も多少聞いてはいたけれど
まだお腹にいる赤ちゃんの名前や、胎児の写真も載せてあって少々驚いた。

25年前、私達夫婦はお見合い結婚をした。
もう〜ばりばりのお見合いで、出会ってから結婚式まで、3ヶ月。
今の若い人たちのノリノリの結婚とは程遠い。
夫から正式なプロポーズも受けないまま、「そういうことになりました。」って言われた。
私も、「そうですか。」とだけ答えたような気がするけど、はっきり覚えていない。
新婚旅行から帰って、新居に移動する車の中で、私は不覚にも泣いてしまった。
皆から祝福され幸せ一杯のはずだったのに、どうして泣いてしまったのか、
それは今でも説明がつかない。
悲しいとか、寂しいとか、嫌だとか 不安とか そんな感情ではなかった。
両親、姉妹の庇護から離れ、私は天涯孤独になり、
これからは、隣で運転しているこの男性の人生に組み込まれていく。
別の世界に住むために、いままでの私の人生と決別しなければならない。
お祭りは終わり、もう其のときがやって来た。
そういう覚悟の涙だったのかもしれない
大仰だけれど、説明するとしたら、こういうことになる。
芝居じみた私の性質が災いしたのかもしれない。
天涯孤独になるなんて、今になって思えば夫に対してなんて失礼な・・・・
でもあのときのあの覚悟は大切な事だったように思う。

夫の趣味はテンコク。
大きなものでは書道作品の名前の下に押してある朱色の印鑑”落款”彫り
小さなものでは絵手紙などにも使われる。
人の作品に入り込むなんて、なんて自己主張の強い趣味なんだろうねぇと夫が言った。
いや、そんなことはないよ。
ジャズセッションみたいなもんだし!
お互いの作品が調和してそれぞれの持ち味が何倍にも膨らむ
あなたの目指すのはそこでしょ?
若いときにはドラムをやっていて、仕事場でもBGMにジャズを流すのが好きな夫は
私の言葉を、えらく喜んでくれた。

ジャズセッションて私も好きな言葉。
こじ付けみたいだけれど、世の中すべて、全部そう。結婚もそう。
爽やかな秋の風を受け 揺れるチェリーセージの赤い花
揺れて、擦れあう葉から、穏やかな香りがしてきた。