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ちょっと立ち話 | ケヤキの話 | 2005/06


我が家の庭には、不釣合いなほど大きな木が2本繁っている。
玄関先にあるのが、クス。中庭にあるのが、ケヤキです。
庭を造ったとき、私と夫が好きな木を一本づつ選んで植えたのです。
夫が選んだのは、豊かに繁ってゆったりとした常緑樹のクス。
私が選んだのは、初夏、勢いよく芽吹くケヤキ。空に向かってまっすぐに伸びる枝姿が好きだ。
10余年にもなるが、毎年毎年、いずれも豊かに繁って、
ケヤキは夏には木陰をつくり、クスはゆさゆさと北風を和らげてくれる。
今年の春、ケヤキはいつものように芽吹きはじめた。
日に日に豊かになるであろう新芽を毎日楽しみにしていたのに、今年に限って、どうも様子がおかしい。
新芽は小さなブロッコリーみたいで、丸まったまま大きくもならない。
森林組合から樹医さんにも見てもらったけれど、分からない
園芸店も、造園の人も、誰も分からない。カイガラムシで弱ったのだろうとか、ダニだろうとか。
その都度、薦められる殺虫剤を買って来ては噴霧した。
噴霧器を背負って、地下足袋みたいな運動靴を履いて、2階の屋根にゆうに届くほどの木に登るのはちょっと大変だが
木のてっぺんから眺める下界の様子はちぢんで見えて、愉快だった。
ここで落ちたら笑い者になるだろうとか、いや落ちたら死ぬかも知れないとか、
殺虫剤が鼻から入って中毒死したらどうしようかとか、中毒死ならまだ良いけれど、
お岩さんみたいにケロイドの顔で生きるのは辛いだろうとか、考えることは山ほどあった。
「あんた!マスクくらいはせな!」と 突然お隣のおじさんから声が掛かった。
風の向きを考えて!なんて言われても、こんな高い木の上でどう風上に移動しろっていうんだ。
顔に殺虫剤を浴びながら、千枚通しを片手に、カイガラムシもこそぎ落としながら噴霧を続けた。
所々、太い幹からネバネバしたものが流れ出ていて、無知な私はギョとした。
涙じゃあるまいし・・これって苦しんでいるってこと?おい!元気出せよ。ケヤキ!
6月も終わる。さやさやと繁っているはずの枝には、ブロッコリーが伸びたような芽が、かろうじてついているだけで、
遠くから見れば今年は枯れ木同然。
今年はなんとか生き延びてよ。と言っても、空梅雨のカラカラ天気じゃ、辛いね
缶ビールの半分を呑み残して、残りをケヤキの根っこにかけてやった。

来期に向けて、癒し エネルギーを貯めているのならよいけれど。まさか・・・・
我が家の居間の喧騒を、窓越しに何年も見ているうちに、ははあ〜〜ん 
おい!死んだ振りして人を驚かせようとしているじゃ、ないだろね!