ちょっと立ち話 | 夫の居場所 | 2004/10


釣りに行かんかあ〜〜〜アジゴ、アジゴ。(アジゴって、小さな アジの子供のこと)
玄関で夫の弾んだ声がした。
釣りに行こうなんて、何年ぶりのこと・・・・・・

子供3人のうち、上2人の男の子は釣りなどには全く興味がなくて、
不思議と娘だけが夫の釣り友達だった。
娘は幼稚園のころでも、ごかい等の餌も自分でつけるし、
大きな獲物など、タモで取り上げて足で押さえて、針から外した。
気持ち悪いとか、魚のヒレが指に刺さって痛いとか、そんなことは一度も言わなくて
全部自分でやって、黙々と釣り糸を垂れて獲物を待つ。
そんな世話要らずの娘と2人、黙って並んで釣り糸を垂らすのがとても楽しい時間だったようだ。
部活やら受験やらで、中学生になった頃からは、一度も釣りには出かけていない。
娘はもう高校3年生

居間にいた私と娘は、鼻先で笑いながら答えた。
「おとうさん、私はかりにも受験生だから。それに明日は模試だし。また今度ね。」
『あなた、そんな気まぐれ・・・・・それに、アジゴの季節なの?』
日に焼けるし、言わずとも魚臭いし、退屈だし。もちろん私もお供は御遠慮申し上げた。
年から年中 仕事仕事の夫が、ここ何週間は日曜日には家にいることが多かった。
釣りに行こうだなんて。。。。。なんか疲れているんだなと思う。
一人で行ってもなあ〜〜結局釣りは中止になって
夫は囲碁の定石のなにやらを、ごろんとして読んでその日は終わった。

何日か経ったある日、私は夫の車の助手席にくしゃくしゃとしたビニール袋を見つけた。
またゴミをこんなにして。。。と思って中を見ると・・・・・
袋の中身は、アジゴ釣りのための練り餌とテグスと針をセットしたサビキ釣り
あのとき、すっかり行くつもりで全部準備してあったのだ。
それならそのように言えばいいのにと思ったけれど
でも言ったところで、やっぱり誰も釣りには付き合わなかっただろう。
忙しく動き回っているときには大して気にもしなかったけれど、ちょっと立ち止まったとき
さて、夫の居場所は居心地がよいのやら。