ちょっと立ち話 | さようなら、テツ | 2003/4


4月に入ってすぐ、次男が寮生活のために家を離れて行った。
寂しくなったが、彼は今年一年 越えなければならない課題を持っての寮生活なので、
私としても安易に寂しいって言って 泣いている訳にもいかない。
私と次男の2人で交替でしていた愛犬”テツ”の散歩は私一人の仕事となった。
2年前、下半身不髄となったが、奇跡的な復活を遂げたテツ。(立ち話の”犬の介護”)
当初、引きずるようにしていた左後ろ足も ときには小屋から脱走するほどにも回復していた。
4月16日夜半。
「う〜わんわん!早く散歩に連れてっておくれよ〜」
小屋から出てお座りをして、「よし!」という言葉を合図に走り出すという
散歩の儀式があるのに、この日に限ってなかなかお座りをしない。
「テッちゃん!こらっ!ちゃんとして!」といって腰の辺りを押すとなんだかダルそうに座った。
太股あたりが震えていたので、あれ?って思ったけれどいつも通り散歩に出た。
「もしまた後ろ足がだめになったら、前の様にいかないかもしれないね」
「毎日歩かないと、足腰が弱るから、寝てばかりじゃだめだからね」
今に思えば、その日に限ってテツは立ち止まる事が多くて、立ち止まっては私を見る。
「テッちゃん どうしたん?」
4月17日。
大型スーパーで自転車の安売りをしているというので、いさんで買って来た。
犬小屋のすぐ横の自転車の置き場まで運んで行き
「テッちゃん!ほら新しい自転車だよ。このブルーの色なかなか良いでしょ?」
「こんなぽかぽかの日は自転車が気持ち良いよね」
テツは尻尾も振らない
「テツ!見てご覧よ。テツ!」
おかしい。いつもなら尻尾を振って立ち上がるのに・・・
「こらっ!テツ!起・き・ろ!テツちゃん」
頭をツンツンとした。一瞬どきっとして、くぐって小屋に入った。
まさか・・・と思ったこと。どうにも逃れられない現実がそこにあった。
ぽかぽかの日当たりのよい小屋の中でまるで寝ているようにテツは死んでいる。
あっけなく、一人で死んだ。
子供たちが昔使っていたタオルケットでテツの体を包んで しばらく抱っこして
垂れた耳や長い口、伸ばした足、さすってみたけれど だらんとしたまま。もうどうにもならない。
テツは思い出の中の子供たちと必ず一緒にいた。
いろんな想いが合わさって 体重17キロは あまりにも重かった。
その日の夜遅く、夫と私で、庭の日当たりのよい場所を選んで大きな穴を掘って、
テツをシーツで顔までくるんで、そっと埋めた。
泣きながら黙々と土をかけ、こんもりと土を盛って、ガーデニング用の柵で囲んだ。
ここはお墓ではなくて、明日から テッチャンの花壇だ。
「病気になって寝込むようなことにならなくて、
昼寝をしている間に事切れたんだから・・良かったと思うよ・・・」
散歩の時 立ち止まって私の顔を見ていた時、どんな話しがしたかったん?
抱っこして欲しかったん?
テツ!13年間 ウチの子になって幸せだった?