ちょっと立ち話 | | 2003/1


スーパーの薬局コーナーで、”踵つるつるソックス”を見ていた時の事
歳のころ・・・75歳くらいだろうか・・もうちょっと高齢かもしれない。
一人のおばあちゃんに声を掛けられた。
「手がこんなになってるんですが、やっぱり傷テープは貼ったほうがいいでしょうかねぇ」
おばあちゃんの様子はなんか心もとない。
『手は痒いのですか?』
そういって私は何気なくおばあちゃんの手先に触ると、びっくりするほど冷たい。
「いえね、暮れに水仕事をしてから、こんなにひび割れたようになって、がさがさして痛いんです。」
『しもやけではないんですねぇ。傷テープは・・それより家になにか塗り薬は持っておられますか?』
「そんなものもないので、今日買って帰ろうかと思っているんです。どれがいいでしょうか・・」
『私もよく分かりませんけれど、もし私だったら。。。これにするかな・・・』
そういって、陳列してある塗り薬の中から、ビタミンEが入っている保湿剤を選んだ。
『私もよく分かりませんから、ここに居られる薬剤師さんに聞かれたら?』
そういったのですが、薬剤師さんがおじさんだったので、
おばあさんはちょっと聞きにくかったのかもしれない。
「いえいえ、いんです。これを買ってかえります。ありがとう。」
そう言って私が勧めた軟膏をレジに持って行かれた。
おばあさんの手は、農家の人のようにも見えなくて、すらっとしていて、
本のページをめくったり、編物などが似合いそうなほっそりとした手だった。
おばあさんの手の冷たさが、ぼってりとした私の手の中にしばらく残って、
何故だかは説明できないけれど、私はその場を離れがたくて、
しばらくおばあさんの後ろ姿を見ていた。

私の手は、女には珍しいほど、大きくて、肉厚で
学生時代の剣道のなごりもあって、血管も浮いていて力強い。指輪がとっても似合わない。
PCのキーボードを打つ自分の手を見ながら、これが私の人生かなって考えた。
家事いっさい、洗濯物を干す時でも手袋をするので 主婦独特の手荒れはないが、
右手は、暮れ 熱湯がかかって火傷して、その後の皮膚が茶色になっている。
皮膚科医から、2〜3ヶ月したら、元の色になりますよって言われているけれど・・・
私はマニュキアはしない。久しぶりに爪用の細やかなサンドペーパーをかけ、
ネイルクリームをつけて羊の皮で艶出しをした。そうしたら、
疲れた手の指先がピカピカして、元気そうな手になった。

あっ!踵つるつるソックスを買うのを忘れていた・・・・