僕は時々、ここから逃げ出して、親をさがしたいなあ、という気持ちになったりします。
自分のそんなひ弱な気持ちで、2回無断外泊をしてしまいました。
そのとき僕はとっても楽しく、寮の先生や学校の先生の気持ちなど全く考えていませんでした。
寮に連れられて行った時、寮の先生に、ひどく叱られました。
でも僕は、それでも見つかったことに腹がたっていました。
すると、僕の担当の先生が心配して泣いてくださっていたのに、気がつきました。
ぼくは、「なんてバカなことをいしてしまったんだろう」と、くやしくて、せつない気持ちになってきました。
僕は深く反省しました。先生はこう言われました。
「誠は逃げても行く所はないじゃないか。誠の家はここしかないんだ。
ここで立派な人間になって、巣立って行ってほしんだ。だから、また明日からがんばれ」と。
言われて、何だか嬉しくなりました。僕は、叱られてしあわせ者だなあと思いました。
親がいない僕を心から叱ってくれる人がここにいるからです。
僕は、もう13年間も太陽寮で生活しています。
とっても悲しかったこと、とっても楽しかったこと、うれしかったこと、心配をかけ迷惑をかけたこと。
そいうことを心のばねにしながら、これから強く生きていこうと思います。
僕は絶対、ガンバル!
そして僕は、父母に次の言葉を届けたい。
「もうどうでもいい。父母なんて。僕は立派に成長して生きていくから。僕は一歩一歩、自分の夢を持って成長し続ける。」
父さん、母さん、聞こえましたか。西誠はここにいる。
この記事は2002年11月21日 朝日新聞朝刊に載ったものです